手
手の症状で来院される患者さんの中で、最も多いのが手の外傷(ケガ)です。その他、しびれ・痛み・腫れ・変形・動きが悪いなど様々な症状で来院されます。当院ではレントゲン検査、エコー検査、CT検査、MRI検査、血液検査などを行い、診断します。 結果的に、全身疾患(関節リウマチ、膠原病など)の診断となる場合もあります。外傷(ケガ)では、挫創、骨折・脱臼、靱帯損傷 等の診断や治療を行っています。しびれを起こす疾患では手根管症候群、肘部管症候群などがあります。症状が軽い場合、保存的治療(投薬、注射、装具療法、リハビリなど)を行い、重症の場合、手術をお勧めする場合があります。当院では、手根管症候群の治療は内視鏡を用いた手根管開放術を行っています。手術時間は30分程度、2箇所の比較的小さなキズで可能です。
内視鏡を用いた手根管開放術

Smith-NephewエクトラⅡテクニックガイドより

2か所の比較的小さなキズで手術可能
肩
当院では肩の症状に対して、X線検査・エコー検査・CT検査・MRI検査などを行い、診断し治療を行っていきます。代表的な肩関節疾患に、腱板(けんばん)断裂があります。肩には腱板と呼ばれる4つの筋肉があり、肩の周りを囲み、関節を安定させ動かす働きを持っています。これらの腱板は、肩をぶつけたり,転んで手をついたりするなどの外傷(ケガ)や、加齢などによる腱板自体の変性(へんせい)、またはその両方が原因となり断裂してしまうことがあり、その状態を腱板断裂といいます。40~50歳代などで、肩痛や運動制限の主な症状を起こす、いわゆる「四十肩・五十肩」の方の中にも、腱板断裂が起きている場合があります。腱板断裂により肩の痛みがでたり、挙上(手を挙げること)ができなくなったりします。腱板断裂の治療は、内服・注射・リハビリテーションで改善が不十分な場合や、痛みや筋力低下が大きい場合、手術治療をお勧めする場合があります。代表的な治療は、鏡視下腱板修復術となります。鏡視下腱板修復術は、内視鏡(関節鏡)を用いて、図のようにアンカーという器具などを用いて修復する治療です。当院では、4K(超高精細)関節鏡システムを用いています。その他には、反復性肩関節脱臼に対する内視鏡を用いた手術(鏡視下手術)も行っております。

断裂した腱板

アンカー(専用の糸)を使用した手術の一例

4K(超高精細)関節鏡システム
リウマチ
-
リウマチとは
関節リウマチとは、関節が炎症を起こし、徐々に骨・軟骨が破壊されていき変形を生じる病態です。本来は、自分の体を守るために免疫(めんえき)が働きますが、何らかの原因で自分の正常な細胞や組織(関節リウマチの場合は関節)を攻撃してしまい、免疫に異常が起こる自己免疫性疾患と呼ばれる病気のひとつです。
-
リウマチの症状
- ●関節の腫れや痛み
- ●朝のこわばり
- ●微熱、全身のだるさ
リウマチかな?と思ったら
まず受診してください。
問診、診察、レントゲン検査、採血、エコーなどを行い、総合的に判断します。
発症から関節の炎症は始まっており、関節破壊に至る前に早期の治療開始が大切です。
治療方法
目標:痛みを抑えると共に、日常生活を支障なく過ごせるための機能を保つこと
-
お薬での治療
関節の腫れや痛みを抑え、関節破壊の進行を抑制します。
-
リハビリテーション
関節の動きを良くしたり筋力を増強したりする「運動療法」、患部を温めて痛みやこわばりを和らげる「温熱療法」、日常生活で関節に負担をかけないような方法を教える「生活指導」などがあります。また関節の変形による痛みを軽減するような、手関節装具や足底板(靴の中敷き)などの「装具療法」もあります。
-
手術療法
中には、十分な薬物療法(お薬での治療)を行っても、関節の炎症が制御できず関節破壊が進行してしまう場合があります。その場合は手術を行い、症状の改善を目指します。増殖した関節内にある滑膜を取り除く滑膜切除術、破壊された関節を人工関節に置き換える手術(人工関節手術)、痛みを取り除き関節の支持性を獲得する関節固定術などがあります。
リウマチの薬
関節リウマチの治療に用いられる薬には、
消炎鎮痛剤、抗リウマチ薬、ステロイド、生物学的製剤、JAK阻害薬などがあります。
(1) 消炎鎮痛剤 | 消炎鎮痛剤は日常の痛みに関しても広く使用されており、関節リウマチでは関節の痛みを和らげる働きがあります。関節リウマチの補助的治療であり、関節破壊を抑制する効果は証明されておりません。 |
(2) 抗リウマチ薬 | 抗リウマチ薬は関節リウマチの原因である免疫の異常に作用し、病気の進行を抑制する作用があります。その中でも、「メトトレキサート」という薬は、関節リウマチの診療ガイドラインでリウマチと診断されれば、禁忌事項(使ってはいけない場合)がない限り、まず一番に使用が望ましい薬と位置づけされています。原則、1週間に1日1回もしくは2回内服する薬です。他にも毎日内服する抗リウマチ薬が何種類かあります。 |
(3) ステロイド | ステロイドは関節の腫れや痛みを速やかに和らげる働きがありますが、長い期間使用を継続すると、高血圧・糖尿病・骨粗鬆症のような副作用がみられるため、症状が強い場合に短期間使用し、症状に応じて徐々に減らしていくことが望ましいです。 |
(4) 生物学的製剤 | 関節の炎症を引き起こす原因となるサイトカイン(免疫細胞が分泌するたんぱく質)であるTNF-αやIL-6の働きを妨げ、関節破壊の進行を抑制します。この薬は注射(点滴または皮下注射)で投与しますが、その間隔は1週間に2回から2か月に1回までとさまざまです。皮下注射の場合は、自宅などで患者さん自身が注射する場合と、病院で医療スタッフに注射してもらう場合があります。通院回数やライフスタイルに合わせて治療薬を選択することができます。 |
(5) JAK阻害薬 (ジャック阻害薬) |
JAK阻害薬は比較的新しいタイプの内服薬で、注射の生物学的製剤と同等の効果が期待できます。 |
(6) その他の薬剤 | 関節の炎症や痛みが強い場合は、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)をすることもあります。 |
- ●関節リウマチの治療ゴールは、関節の炎症(痛み)を取りのぞき、関節破壊を抑制し、質の高い生活を送れるようにすることです。
- ●患者さんの症状、既往症など様々な状態に合わせた治療を、患者さんと相談しながら進めます。
- ●関節リウマチで使用する薬は高額なものもありますが、医療費負担を軽減する制度
(高額療養費制度など)を利用し、安心して治療を継続することができます。