辛いひざなどの痛みの改善が期待できる新たな選択肢
●注射で行える日帰り治療
●効果の持続性が高い
●副作用のリスクが少ない
PRP(Platelet-rich Plasma)は、日本語で「多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)」と言います。血液内に含まれるPRPを活用することにより、身体の組織の修復が早まったり、治りにくい組織の修復や保護効果が期待されます。この効果を利用する治療方法がPRP療法です。
本治療は『再生医療等の安全性の確保等に関する法律』に則り、第二種再生医療等、第三種再生医療等として再生医療等提供計画の認可を得て、定期的に厚生労働省へ治療報告を行っています。
- ・提供計画番号PB4230027:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)の投与による変形性関節症の治療
- ・提供計画番号PC4230047:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた整形外科領域における軟部組織治療
ひざなどの関節の痛みの治療
変形性関節症とは?
変形性ひざ関節症はひざの痛みの原因になる最も一般的な病気で、年齢とともに病気は進行していきます。軟骨がすり減ったり、骨のトゲができることによって、つらい痛みを引き起こします。軟骨は一度すり減ると元に戻りません。つまり、早期の治療が大切です。

これまでの変形性ひざ関節症の治療
関節を支える筋肉を鍛える運動療法と肥満の改善が中心で、痛みを伴う場合には痛み止め薬やステロイド注射による関節炎のコントロール、ヒアルロン酸注射による痛みの一時的な緩和を行います。これらの方法が無効となった場合は手術が選択肢になります。
それにもかかわらず、国内で約1000万人に上るとされている変形性ひざ関節症の自覚症状のある方の中で、手術治療を受けられる方は年間約10万人(約1%)しかいません。今まではこれだけ手術を希望しない患者さんがいたにもかかわらず、代替となる治療がなかったというのが現実でした。
そこで、近年注目されているのがPRP療法です。
PRP療法の特徴
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日帰りで行える
採血を行った当日に短時間で治療を受けることができます。
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効果が長く持続
変形性ひざ関節症に一般的に行われるヒアルロン酸注射と比較して、長期的な作用が期待できます。
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副作用のリスクが少ない
患者さんご自身の血液だけを使用し、治療を行います。そのため、アレルギー反応や拒否反応などのリスクが少ない治療法です。
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手術が受けられない方も
持病や年齢を理由に手術ができないと言われた方も、PRP療法は持病や年齢に関係なく治療が受けられます。
PRP療法の適応疾患
ひざなどの変形性関節症 | |||||||
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その他 筋・腱・靱帯の疾患 |
その他:疲労骨折など |
当院のPRP療法について
当院では、PRP療法の経験豊富な医師が選んだ2つの治療方法を提供しています。患者さんの状態に応じて、これらの治療を単体または複合的に使用することをご提案します。
当院は、安全に細胞の加工が行える基準を満たす施設として、細胞培養加工施設として厚生労働省から認可を受けております。(細胞培養加工施設番号FC4230029)
1. リーズナブルPRP療法(ACP-PRP療法)
国内で承認された専用の医療機器を使って、少量(15ml)の血液から純度の高いPRPを精製します。国内外で広く利用されており、高い安全性と治療効果を確認できます。また、比較的安価に提供できるため、PRP療法をお試ししたい方、何度も受けたい方へ幅広くご紹介しています。
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ACP-PRP療法の特徴
- ●受診当日に待ち時間15分程度で治療可能
- ●採血量は15mlのみ
- ●3回投与で12ヶ月程度の持続
- ●治療に用いる医療機器を使った複数の信頼性の高い試験の結果が権威のある医学雑誌に投稿されている
2. オーダーメイド高濃度PRP療法
(Angel cPRPシステム)
最新の医学的知見に基づき、患者さんの状態毎に最適と考えられるPRPの濃度や成分の割合を調整します。少ない治療回数でより効果の高い治療を望む患者さんにお勧めしている治療になります。海外文献では比較的症状の進行した患者さんにも使用されています。
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Angel cPRPシステムの特徴
- ●1回投与で12ヶ月以上の持続期間
- ●受診当日に治療可能
- ●採血から治療まで待ち時間は30-45分程度
- ●治療回数が少ない
- ●患者さん毎に医師が最適と考える濃度や量に調整
- ●血小板を約10倍に濃縮
PRP療法の流れ
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診察(保険診療)
現在の症状、過去の治療歴を伺います。
●レントゲン検査・MRIなどで病状の把握・診断を行います。
●治療の適応があると判断した場合、治療の注意点をご説明します。
※治療経過や症状によっては、PRP療法よりも先に検討した方が良い治療方法をご案内する場合があります。
※PRP療法の前に休止した方が良い薬があります。内服している薬がある場合は、診察時にご相談ください。
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PRP予約とインフォームドコンセント・同意書の説明
PRP療法について説明と同意後、予約を行います。
※PRP療法前に休止が必要な薬のご案内も行います。
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採血・治療(保険適応外診療)
受付を済ませ、同意書を確認後、採血を行います。
PRPの調整の間5~30分程度お待ちいただきます。
調整完了後、PRPを注射します。
●病気やケガの状態や場所により、目的とするPRPの濃度を変更するため、採血量を調整します。
●正確に患部へPRPを注入します。
●治療後は20-30分程度安静にしていただき、問題なければそのまま歩いて帰宅いただけます。
治療期間及び回数
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標準的な治療期間:3~6ヶ月
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標準的な治療回数:1~3回
1~3回のPRP療法を終了後、約1ヶ月後、約3ヶ月後、6ヶ月後に、症状や日常生活レベルの改善、レントゲン写真やMRI検査所見がどのように変化したかを評価します。
リスク・副作用
PRP療法には、患者さんご自身の血液を用います。採血量は15mlから最大で157mlです。ごく稀に以下の表に示す合併症(手術や検査などの後、それがもとになって起こることがある症状)の報告があります。また、PRP療法に関連した偶発症(稀に起こる不都合な症状)や合併症も考えられます。これらの合併症が起きた場合には最善の処置を行います。
採血・治療(保険適応外診療)
偶発症・合併症 | 頻度・対応など |
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採血に伴う痛み | 痛みの感じ方には個人差がありますが、通常の場合、次第に治まります。 |
気分不良、吐き気、めまい、失神 | 0.9%(1/100 人)* |
失神に伴う転倒 | 0.008%(1/12,500人)* |
皮下出血 | 0.2%(1/500 人)* |
神経損傷(痛み、しびれ、筋力低下など) | 0.01%(1/10,000人)* |
* 献血の同意説明書(日本赤十字社)より転記
PRP注入に関連するリスク
偶発症・合併症 | 頻度・対応など |
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感染 | PRP 調製にあたっては、細菌などの混入を防止する対策を取っていますが、完全に混入が起こらないとはいえないため、注入後は、注意深く観察を行います。感染の兆候が認められた場合には、抗生剤の投与など適切な処置を行います。 |
注入の痛み | 注入後は必要に応じ、鎮痛剤を服用していただきます。痛みの感じ方には個人差ありますが、痛みは次第に治まります。 |
注入部位の腫れ | 注射後 3~4 日は、細胞の活発な代謝が行われますので、腫れやかゆみ、赤みや痛みが出るなどがありますが、自然に消失していきます。 |
施術部位の内出血(紫色になる) | 次第に治まります。 |
費用
自由診療のため、保険診療と比べ治療費は高額となってしまいますが、多くの患者さんへの提供を目指してなるべく安価での提供に努めております。
関節内の治療(第二種再生医療)
治療法 | 費用(税別) |
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リーズナブルPRP療法(ACP-PRP)1回 | 片側 50,000円 |
オーダーメイド高濃度PRP療法(Angel cPRPシステム)1回 | 片側 250,000円 両側 400,000円 |
筋肉、腱、靱帯、筋膜の治療(第三種再生医療)
治療法 | 費用(税別) |
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リーズナブルPRP療法(ACP-PRP)1回 | 40,000円 |
オーダーメイド高濃度PRP療法(Angel cPRPシステム)1回 | 200,000円 |
PRP 調製のための採血にかかる費用、PRP 調製費用、投与にかかる費用が含まれます。
よくあるご質問
- どういった症状の場合、PRP療法が有効ですか?
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変形性ひざ関節症については、人工関節手術の適応とはならない程度の重症度であり、ヒアルロン酸注射を何度も受けたが改善しない方が適応になると考えております。
スポーツ関連疾患(外傷・変性)については、保険診療におけるリハビリを十分行ったが改善が見られない腱の変性疾患、スポーツによる捻挫や肉離れ等の症状があり、少しでも早期復帰を望む方も適応となると考えております。
- PRP療法は保険診療における治療と比較し、どのようなメリットがありますか?
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高額な治療ですので、保険診療で治療できる場合には保険診療内での治療をお勧めします。しかし、保険診療における治療で効果が乏しい患者さんは一度考慮してよい治療といえるかもしれません。
変形性ひざ関節症については、関節の健康寿命を延ばせる可能性のある治療として、スポーツ関連疾患(外傷・変性)については、スポーツへの早期復帰や手術の回避の可能性のある治療として期待されています。
- PRP療法はどの程度の期間で効果が実感できますか?
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変形性ひざ関節症では、研究データによると治療後1~2週間程度で効果が徐々に表れ始め、2ヶ月後程度から効果が実感されてくることが示されています。ただし、これらはあくまで平均値ですので、ばらつきはあります。また、重症度や年齢等によっても効果が左右される可能性があります。
【参考文献】
Finnoff JT et al. American Medical Society for Sports Medicine position statement: interventional musculoskeletal ultrasound in sports medicine. Clin J Sport Med. 2015 Jan;25(1):6-22.
Patrick A. Smith et al.. Intra-articular Autologous Conditioned Plasma Injections Provide Safe and Efficacious Treatment for Knee Osteoarthritis An FDA-Sanctioned, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial. The American Journal of Sports Medicine. 2016 Vol. 44, No. 4